若手技術者の育成プログラムのつくり方|「3年で一人前」にする年次ごとの目指す状態とスキルの分け方

若手技術者の育成プログラムのつくり方 人材育成

「若手がいつまでたっても独り立ちしない」
「一人前の基準が、上司によって違う」
「せっかく採用した若手が、3年たたずに辞めてしまう」

技術者が多い会社の経営者や人事担当者から、こうした悩みをよく伺います。

結論から言うと、若手技術者を育てるには、「3年後にどんな状態になっていてほしいか」を行動の言葉で決め、そこから1年目・2年目の目指す状態を逆算して、計画とチェックで回すことが大切です。これを「育成体系」と呼びます。

この記事では、技術者の育成体系づくりを支援してきた経験から、「3年で一人前」にするための育成体系のつくり方を解説します。

若手技術者の育成プログラム(育成体系)とは

育成プログラム(育成体系)とは、入社した人を、一人前と呼べる状態まで計画的に育てていくための道筋のことです。年次ごとに「どの状態まで、どのスキルを」身につけるかを決め、育成計画とチェックで回していきます。

育成体系がない会社では、育成は配属先の上司や先輩の経験に任されます。その結果、

  • 一人前の基準が人によって違う
  • 若手が「自分は今どこにいて、次に何を目指せばいいのか」分からない
  • 育て方が上手な先輩の下にいる若手だけが伸びる

といったことが起こります。若手が成長を実感できないことは、早期の離職の大きな理由の一つにもなります。

■杉浦のひとこと

採用の段階で、最低限の人物要件とスキルを見極めて入社してもらっているなら、3年で一人前にすることはできます。仕組みさえつくれば、なれるんです。もしなれなかったのなら、それは本人ではなく仕組みの問題だと考えるべきです。

特に新卒の場合、採用で見極めたうえで迎えたのに、3年以内に辞めてしまったことを本人のせいにするのは間違いだ。これが私の持論です。

もし育成の仕組みの問題でないとすれば、それは採用の問題です。自社で求められる人物要件をきちんと分析し、それを見極められる採用の施策にする。そして、その採用の施策も仕組みにして、面接官によって判断がぶれる「属人化」をなくす。採用・育成・制度は、どれか一つだけを直しても成果は出ません。一つながりで考えることが大切です。

育成プログラムのつくり方 ステップ1:年次ごとの「目指す状態」を決める

最初にやるのは、入社から3年目までの「目指す状態」を決めることです。技術職の例を示します。

時期目指す状態
1年目前半(入社〜配属、0〜6か月)研修で業務の全体像と基礎知識を理解し、配属後に動き始められる
1年目後半(配属後〜1年目の終わり)先輩の指導のもと、担当業務の基本作業を経験し、おおむねの仕事を把握している
2年目の終わり先輩のサポートがあれば、ほぼ自立して作業を進められる
3年目の終わり(一人前)担当領域の業務を自分で進められ、作業の見通しを立てて能動的に動ける

この中で、いちばん大事なのは「3年目(一人前)」の定義です。ここが決まると、1年目・2年目に何を身につけるべきかが逆算できます。

一人前の定義は、人事だけで決めず、必ず現場の上司や技術部門と話し合って合意します。現場が「これなら一人前と認める」と思える言葉になっていることが大切です。

ステップ2:スキルを3つの層に分ける

次に、身につけてほしいスキルを洗い出し、3つの層に分けて整理します。

層中身の例
職種のコアスキル設計、加工、検査、図面の読み書き、試験・評価、ツールやAIの活用など、その職種ならではの技術
仕事を進めるスキル作業の計画と見通し、報告・連絡・相談、関係部門との連携、資料・記録の作成
その会社の社員としてのスキル自社の強み・製品・お客様を知り語れる、業界と技術の動き、社内ルールや安全・情報管理、行動指針の実践

技術者の育成では、つい1つ目の「職種のコアスキル」ばかりに目が向きがちです。しかし実際に一人前としてつまずくのは、2つ目の「仕事を進めるスキル」や、3つ目の「自社を知ること」であることも少なくありません。

スキルは「行動の言葉」で、段階ごとに書く

それぞれのスキルについて、年次ごとに「どんな行動ができればよいか」を書きます。たとえば「AIツールの活用」なら、次のように段階をつけます。

  1. 使い方を理解している
  2. 分からないことを、自分で調べて解決しようとする
  3. 出てきた答えをうのみにせず、正しいかどうかを判断して使える
  4. 効果的に使いこなし、なぜその使い方を選んだかを説明・共有できる

「理解している」「できる」だけの書き方では、上司によって判断が分かれます。行動の言葉で書くと、本人も上司も同じ物差しで確かめられます。

「必須」と「できれば」を分ける

洗い出したスキルは、全員が一人前までに必ず身につけるもの(必須)と、あれば戦力の幅が広がるもの(できれば)に分けます。すべてを必須にすると、育成計画が重くなりすぎて回りません。

また、職種の技術の中身は部門や担当製品によって違います。最初から完璧を目指さず、部門ごとのヒアリングで少しずつ書き足していく前提で進めます。

ステップ3:計画とチェックで回す道具をそろえる

目指す状態とスキルが決まったら、それを回すための道具をそろえます。

道具中身
育成計画書年次×スキルで、誰に、いつまでに、どこまで、を一人ずつ計画する
育成チェック表定期的に本人と上司(またはOJT担当)でチェックし、次の課題を書き込む
OJTの進め方OJT担当の役割、教え方、困ったときの相談先を決める(担当者任せにしない)
1on1上司との定期的な対話で、育成計画とチェックをつなぐ
年次ごとの研修内定者研修、新人研修、昇格前研修などを、目指す状態に合わせて配置する

特に大切なのが、定期的なチェックです。計画を作っても、途中で確かめなければ、気づいたときには1年が過ぎています。半年に一度でも、本人と上司が「今どこまで来ているか」を同じ表で確かめるだけで、育成の質は大きく変わります。

ステップ4:採用・評価とつなげる

育成体系は、それだけで完結させず、採用と評価につなげることで本当に機能します。

採用とのつながり

採用のときに「入社後3〜5年で、こんな役割を担ってほしい」と考えて人を選んだなら、その姿と育成体系の「一人前」がつながっている必要があります。

また、選考で見えた強みや課題は、配属先の上司やOJT担当に引き継ぎ、育成計画書の最初に反映します。採用で見た人物像が、育成の現場に届いていないというのは、よくある見落としです。

評価とのつながり

育成体系の「一人前」は、等級制度の最初の段階で期待する役割とつながるようにします。こうすると、若手は「一人前になれば、次の等級に上がれる」という道筋が見え、目標を持って成長できます。育てる側の評価への入れ方は、「製造業の人事評価制度導入、1年目でつまずく4つのポイント」の記事で解説しています。

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若手技術者の育成プログラムでよくある質問(FAQ)

Q1. 「一人前」を3年にするか5年にするか、どう決めればよいですか?

職種の難しさと、会社が若手に期待する役割で決めます。目安として、新卒や未経験の若手は入社後3〜5年、経験者として採用した人は半年〜1年(遅くとも2年)で、期待する役割を果たせるかを考えます。大切なのは年数そのものより、「その時点でどんな状態か」を言葉にして合意することです。

Q2. 中小企業でも育成プログラムは作れますか?

作れます。最初から全職種・全スキルを網羅する必要はありません。まずは人数の多い職種について、「3年目(一人前)」の状態と、必須のスキルだけを決めることから始めましょう。それだけでも、若手と上司の目線はそろいます。

Q3. ベテランの技術はどう育成体系に入れればよいですか?

ベテランの判断の基準やコツを聴き取り、言葉にして残すことで、職種のコアスキルの中身が具体的になります。引き出し方は暗黙知を形式知に変える5つの方法で解説しています。

まとめ:「3年後の姿」から逆算して、計画とチェックで回す

  • 年次ごとの目指す状態を決める。いちばん大事なのは「3年目(一人前)」の定義
  • スキルを「職種のコア」「仕事を進める」「自社の社員として」の3層に分ける
  • スキルは行動の言葉で、段階ごとに書く。「必須」と「できれば」を分ける
  • 育成計画書とチェック表、1on1で回す
  • 採用で見た人物像と、等級・評価につなげる

最初の一歩として、「うちの会社の一人前とは、どんな状態か」を、技術部門の上司と一緒に3行で書いてみてください。そこから、育成体系づくりが始まります。

Tecrhymeでは、技術者が多い企業の採用、育成体系、等級・評価制度を一体で設計・運用まで支援しています。若手の育成でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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■この記事の監修者

監修者 杉浦大介(株式会社Tecrhyme 代表取締役)

杉浦大介(株式会社Tecrhyme 代表取締役)
1978年愛知県名古屋市生まれ。南山大学経営学部経営学科卒。大手空調メーカーで営業職からキャリアをスタートし、大手自動車部品開発会社に人事として転職、人事変革を推進。人事コンサルティングベンチャー企業でCOOを務め、上場準備期まで企業成長を主導。2023年3月に株式会社Tecrhymeを設立。これまでに1500社以上の経営者・人事責任者への講演活動、200社以上のコンサルティングを実施。2021年に『理系の[採用・活かし方]トリセツ~テクダンテクジョがあなたの会社を10倍伸ばす』(ぱる出版)を出版。

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